日本人は平均で1日200グラムのウンコを排出する。欧米人と比べても多く、日本は世界有数のウンコ排出大国だ。 ウンコは肥料の三要素のうち、窒素とリン酸を豊富に含む。リンの主要産出国である中国が禁輸に動き、ウクライナ危機も重なって、世界的な肥料不足が懸念されるなか、ウンコの価値が世界中で評価されている。
養殖海苔に窒素やリンを供給する栄養塩として、下水熱を使ったビル空調や、冬場に凍結した雪を融かす熱源として、自動車燃料、発電、宇宙ロケットの燃料として、ウンコの活用分野は、我々の想像よりずっと幅広い。 日本経済の切り札「ウンコノミクス」の可能性を探る。
第一章 迫るXデー――リン酸が足りなくなる日
一 九割を依存した中国が禁輸に動いた
二 世界は化学肥料の争奪戦へ
三 ウンコという都市鉱山
第二章 ウンコ版「夜明け前」――バカにならない温室効果
一 羽田の隣は国内最大の下水処理場
二 大都市は軒並み「火葬」
三 「金肥」だった時代
第三章 再び「金肥」になる――ウンコの山は宝の山
一 発酵や乾燥で優れた肥料に
二 鶴の一声が生んだ新たな肥料
三 「Bダッシュ」で下水道に爆速の進化
第四章 夢洲(ゆめしま)はウンコ島――悲しき埋め立て処分
一 大阪万博アンダーグラウンド
二 ウンコの副産物で下水管を固める
三 「埋め立てればいい」が大阪の本音
第五章 水産から半導体まで――生活を支える資源への回帰
一 海苔の養殖と下水道
二 半導体に食品添加物、消火器も
三 金鉱山より金が採れる
第六章 ウンコは熱い――サステナブルな熱源
一 ハウスの加温に雪国の融雪
二 車を走らすバイオガス
三 ロケット発射
第七章 先進国化が絶った循環――ゴミになったウンコ
一 蟯虫検査が廃止された理由
二 化学肥料と下水道
三 戦後も走った汚穢列車
第八章 食料輸入大国はウンコ排出大国――合わない養分収支
一 海外から栄養分を大量持ち込み
二 人も家畜も出す一方
三 見えなくなった価値
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