「このビル、ロボットの充電場所がないんです」
竣工したばかりのオフィスビルで、施設管理の担当者からこう相談を受けたことが、一度や二度ではない。最新の設備を備え、環境認証を取得し、テナントの入居も順調に始まった真新しいビル。しかしその図面のどこを探しても、清掃ロボットが夜間に帰る場所は描かれていない。
なぜこうなるのか。技術の問題ではない。もっと手前の問題である。
コンセントの図示記号は誰が描いても同じ形をしており、照度基準を引けば照明器具の台数が決まり、消防法の警戒半径を当てれば感知器の個数が自動的に拾える。「基準があるから、図面に描け、数量が出て、費用が見積もれ、検査ができる」ー この構造が、センサーとロボットとIWMS(統合管理基盤)にだけ存在しない。
図面に描かれていないものは、建物の中に居場所を持たない。予算にも計上されず、工程にも載らず、竣工検査の対象にもならない。だから竣工の翌日から「後付け」が始まる。後付けのエレベーター連携改修、後付けの電源工事、後付けのネットワーク増設。設計段階なら仕様書の一行と鉛筆一本で済んだはずのものが、竣工後には工事一式になる。
本書は、この欠落を埋めるために株式会社ビルポが策定した「スマートビル設計標準」の全体を公開し、その根拠と使い方を解説するものです。
■ 標準は三つの部品からなる
・**配置密度基準** - 床面積あたりの設置ポイント数で機器数量を導く。基本設計の初日に、スマートビル化の概算数量が出せる
・**図示記号 SB-000** - 全21記号と3線種。形が分類を、文字が機能を語る記号体系
・**特記仕様書** - 全8章23条。製品名を書かない性能規定で起草し、そのまま工事特記仕様書に編入できる
特記仕様書は**条文の全文を付録Cに収録**しました。解説だけでなく、実務でそのまま使える形で開示しています。
まえがき/はじめに
Part 1 問題提起編 なぜスマートビルに「設計標準」がないのか(Chapter 1~3)
Part 2 標準本体編 スマートビル設計標準(Chapter 4~6)
Part 3 実践編 標準の使い方とこれから(Chapter 7~9)
付録A 用語集
付録B 設計者向けチェックリスト
付録C 特記仕様書 全文(全8章23条)
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